いたら教えてください。
誰か「健康になるために生きている人」はいますか~?
コロナウィルス感染が急速に拡大し、岩倉市内の介護事業所でも感染が報告されている中で、どの事業所もご利用者さんとスタッフの命を守るために色々な感染対策に追われていると思います。
毎日対応に追われている中、ある入所施設のスタッフさんの言葉がとても印象的でした。
「感染対策はもちろん大事ですが、90代の入居者さんが「面会禁止」といってご家族に会うことができなくなってしまうのはどうなのかな、と。介護って何なんだろうって考えさせられます。」
まさに、介護現場で真剣に働いている人は感じていることではないでしょうか。
感染リスクを0にするのであれば、だれもいない個室で一人でじっとしていればいい。
でも、それでいいのか。
できる限りのリスク管理はしつつ、できる限り今までの生活を続けてほしい。
そんな想いの介護スタッフの方は多いと思います。
宮城県で行われた9万人を7年間追跡した公衆衛生の調査では、生きがいをもっている高齢者の死亡リスクが、生きがいをもっていない高齢者に対して13%低いという結果がでたそうです。
また、アメリカシカゴ州で970人を6年間追跡した調査では、生きがいをもっている高齢者の要介護状態になるリスクが、生きがいをもっていない高齢者の約半分になったとの結果になったそうです。
つまり、食事や血圧、薬、筋肉などより、「生きがい」を持つことの方が寿命を延ばすことができる結果になっているのです。
逆に言うと、生きがいをもって毎日前向きに生活していれば健康になれるのです。
高齢者の生活を支える私たちは、ご利用者さんが「健康になるように」ではなく「生きがいを持てるように」支援をしなくてはいけなということではないでしょうか。
介護の現場では、介護保険以前の措置時代に行われていた「療養上のお世話」つまり管理することがいまだに「介護」だと思っている人が大勢います。
ですが、管理の中からは生きがいなどは絶対に生まれません。
生きがいとは、簡単に言うと楽しみであり人に必要とされることです。
「家族・友達がいるか?」が人生の満足度に大きく影響を与えると言われていますが、まさに生きがいとは人との関りの中でつくられるものではないかと思います。
生きがいは、利用者さんが自分の意志でやりたいことができることや、人から必要とされること、頼りにされること、自分の居場所があることでしか生まれません。
何のために生きているのか。それは健康になりたいからではなく、生きたいと思える生活があるからです。
コロナ禍でリスク管理ばかりに目がいってしまっている中、デイサービスの役割や事業者が本当にやらなければいけないことは何か、改めて見つめなおすいい機会だと思います。
そして介護現場で働いている方たちは、自分がやりたかった介護はどんな介護だったのか、誰のためにどんなことをしたかったのかをもう一度思い出し、また現場に戻った時に目の前にいる利用者さんや入居者さんが生きがいをもって生活できているのかを改めてじっくりと見てほしいと思います。
そして、目の前の利用者さん・入居者さんに「何のために生きていますか?」と聞いてみて下さい。
その時、生きがいをもって生活していて、はっきりと「〇〇だから生きているんだ」と答えてくれる人はどれくらいいるでしょうか。
さんえすは「施設に入りたくて入る人はいない」「誰もが自分の家で生活を続けたい」という想いをもとに、在宅生活の継続のための支援にこだわってきました。
自宅で生活を続けることもご利用者さんにとっての「生きがい」になると思いますし、在宅生活を続けていくうえで、前向きに生きる力や活き活きと生活ができるよう、デイサービスの中で自分の役割を持ち、スタッフ・他利用者さんとの関りを大切にし、一人ひとりに合わせた様々な個別活動を行っています。
デイサービスが行うべきことは、健康管理ではなく生きがいを創ることです。
目を輝かせて「〇〇だから生きているんだ」と言える高齢者の方を一人でも多く増やしていくのが介護職の仕事だと思います。
ご利用者さんにそう言ってもらえるよう、これからも毎日ご利用者さんと関わっていきたいと思います。
野村