いつも「腰が痛ゃ~」と机に突っ伏している利用者さん。
特に何をするでもなくテレビを眺めて過ごしている利用者さん。
デイから帰る時には「今日でもう来るのやめとくわ」と言い残し帰っていく利用者さん。
せっかくさんえすに通い始めたものの、さんえすに来る意味や目的、楽しみも何も感じることなく過ごしているこの利用者さんに、どんな支援をしていけばよいかスタッフが考えていました。
生活歴などを見ると、右恥骨坐骨を骨折し入院するまで月1回の盆栽教室に通っていて、自宅の庭にも盆栽がたくさん置いてあるほど盆栽が好きな方でした。
早速盆栽を活かした活動を提供しようと思い、タブレットで盆栽の画像を見せてみると、「これはいいやつだな」と言いながら食いついてきました。ですが、画像を見ながら話をしてくれるものの、何か足りない。実際に盆栽をやってみようかとタブレットで見てみると利用者さんが食いついた盆栽は1つ200万円…
他の方法を考えている時、スタッフの実家にある盆栽を頂けるとのお話が。喜んで利用者さんと一緒にそのスタッフの実家へお邪魔しました。
庭いっぱいに置いてある盆栽を前に、「腰が痛ゃ~」はずの利用者さんはスタスタと歩き、盆栽の前にしゃがんではいろんな角度から眺め、またスタスタ歩いては別の盆栽へ向かっていきます。
今までデイでは見たことのない真剣な表情で盆栽に向き合う利用者さん。
そしてじっくり品定めをして、5つの盆栽を選びました。そしてこの盆栽たちを「生き返らせる」と言い、デイに持って帰りました。
デイに戻るとすぐに剪定が始まりました。
そしてデイの玄関へ行き、痛いはずの腰を曲げ土を入れ替え水をやります。
そして、他利用者さんに指示を出し、盆栽が一番活きるように正面を決めてレイアウトをしていきます。
その姿に触発されて、スタッフや他の利用者さんも玄関の掃除や花の手入れを始めました。
この日以来、この利用者さんはデイに来ると盆栽の手入れを欠かさず行い、活き活きと過ごすようになりました。
机に突っ伏している「腰が痛ゃ~」利用者さんはもういません。
この表情、動き、そして何より自分から動く意欲。
これがさんえすが目指すデイサービスです。
他の利用者さんもそれぞれ意欲を刺激するスイッチが必ずあるはずです。
そのスイッチを見つけてあげることができるよう、利用者さんと関わっていきたいと思います。
野村