conceptさんえすの想い

  • それでは介護者の方(ご家族)にとっての具体的な取り組みはどうでしょうか?

    野村

    「介護負担の軽減、レスパイトケアというのはデイサービスのすごく大事な役割の一つ」

    やはりご利用者さんが在宅生活を続けるためには、絶対に介護者であるご家族さんの支援が必要です。
    ですが、家族さんはそれこそ365日24時間、生活と隣り合わせの介護をされてみえるので、負担はほんとうに想像できないくらい大きいと思います。
    そのため、介護負担の軽減、レスパイトケアというのはデイサービスのすごく大事な役割の一つだと思いますね。

  • 「レスパイトケア」とは?

    野村

    レスパイトケアというのは「介護者の休息」ということです。
    例えばウチでやっている「宿泊」、これはまさにレスパイトですね。

    ご利用者さんが認知症の方だと、昼夜逆転してしまっていたり、夜間不穏になってしまったり、そういったことが続くとご家族さんの負担も大きくなるために、結局「もう施設に、、、」ということになっちゃうんですね。

    そうなる前に、例えば週に1回でも月に1回でも宿泊を使ってもらい、その1日はご家族さんは息抜きができる、というのがレスパイトです。

  • 宿泊サービスはさんえすさんを始められるときからやることを決めていたのですか?

    野村

    「年末年始もぶっ通しの365日営業でやる、というところは最初から決めてい ました」

    はい。最初から決めていました。
    やはり「在宅の支援」というのを一番に考えていましたので、在宅を支援できることであれば、とりあえず全部やろう、ということで始めましたから、宿泊もやりますし、年末年始もぶっ通しの365日営業でやる、というところは最初から決めていました。

    当然介護には年末年始も関係ないですし、生活は毎日あるもので、それはもちろんご家族さんも一緒なので、そこには絶対にデイサービスも必要だろう、と。

    実際に年末年始に宿泊で利用される方もいらっしゃるので、ぼくはオープンしてからは毎年ここで年越ししてます(笑)

  • その宿泊について、利用者様のために取り組んでいることはありますか?

    野村

    「人として普通の生活、普通のことをちゃんとやる」

    宿泊をやっているデイサービスに限って多かったことですが、在宅支援うんぬんより「儲け」「囲い込み」という部分が強いために、人権を無視した劣悪な環境でたくさんの人を連泊させているところも多くて、一時期その実態が報道もされていましたよね。

    もちろん使命感をもって取り組んでいる素晴らしい事業所さんもたくさんあって、全部が全部、報道のようなところではないんですけど、男女かまわず雑魚寝させるだの、連泊させる、ネグレクトやら、、、正直「これが介護の現状か」と思うことは多かったですね。悲しいですけど。

    でもウチの宿泊は違うんですね。そもそもの出発点が違う。
    利用者さんが家で生活を続けるために必要な泊りしか受けないので、長期の連泊は基本的にお断りしているんですね。 1ヵ月預けっぱなしとか。

    あくまでも家に帰る前提。例えば、どうしてもご家族さんに急用ができて泊りで出かけなければいけないとか、それこそ冠婚葬祭だとか、今まで行けなかったけど久しぶりに旅行に行きたい、そういった時に1泊、2泊利用して頂くかたちですね。
    なので、泊りの定員は4名なんですが、たいてい泊まるのは1名か2名くらいなんですよ。 なので職員とほぼマンツーマンなんですね。

    泊まりがある日も今はだいたい月に数日間ですね。

    それで、もちろん泊まられる利用者様が男女の場合は、完全に分けますし。本当に当たり前ですけど。

    あと、夜寝るときはパジャマや寝間着に着替えて、朝になったら洋服に着替えて「朝」と感じる、という人間の当たり前のリズムがあるので、それは例えば認知症でそういった感覚が無いと思われてる人であっても、夜はパジャマに着替えてもらう、歯磨きをしてもらう、という普通のことをちゃんとやる、ということはしっかりと取り組んでいますね。

  • 介護士の現状について思うことはありますか?

    野村

    「理想の介護が出来ている介護士さんは少なく、不満に思っている方も多い」

    本来はみんなもっとコミュニケーションを取りたいんですよね。
    介護士さんは本当に優しい人が多くて、高齢者の方、おじいちゃんおばあちゃんと接するのが好きとか、話をするのが好きとか、何かしてあげたい、そういう気持ちで始めている人が多いので。

    ですが、やはり離職率が高いと言われているじゃないですか。
    じゃあなんで辞めちゃうんだろう、現実と何が違ったのか?というところは、やはり人手不足のために、少ない人数でたくさんの利用者さんをみなければいけない。
    例えば、入浴するにも決められた時間のなかで利用者さんを全員入れなければいけない。
    そのために出来るだけ効率良くしなければいけない。だから「世間話をしている時間があるなら次の人を早く呼んできなさい」、ということになる。
    こういう状況では職員もみんなカリカリしてしまって余裕がない、ということになりますよね。

    実際ウチに、ご利用者さんの爪を切りながらおしゃべりするのが好きな職員がいるんですけど、以前の職場ではそれをしていると「爪切りなんて早く終わらせて早くこっち手伝って」と怒られるからできなかった、と言ってましたね。

    自分がやりたいことというか、理想の介護というか、そういうのができている介護士さんというのは現状では少なくて、そういう現状を不満に思っている方も多いのかなと感じるところがありますね。

    なので、ウチにきた職員は、まず時間の流れ方が全然違うということに驚いていますね。
    以前の職場ではそれこそ「しゃべってる暇があったら、、、」という感覚でやってきているので、「まずは利用者さんとお話ししててね。」と言われると、最初は何をしたら良いのかわからない、ってなるみたいですね。仕事をしていない感じと言いますか、そういうふうに感じるみたいですね。

  • 介護業界全体で人手不足という状況があると思いますが、さんえすさんではいかがでしょうか?

    野村

    「足りていない、けど誰でもいいわけではなくてやっぱり質が重要」

    人手が足りているか足りていないかで言うと、「足りていない」という方に入るんですが、じゃあ
    誰でもいいから人が増えれば良いか、といったらそれは全然違うんですよね。
    やっぱり「質」が本当に重要になってきますね。

  • こんな方に来てもらいたい、というのはありますか?
    例えば今までお話しを頂いたようなさんえすさんの理念や想いというのを共感・理解してくれる、というところが重要視されるポイントになるのでしょうか?

    野村

    そうですね。面接の際などに見るのはやっぱりそこですよね。
    ぼくが今お話ししたようなことを面接でもお話しするんですけど、その時の相手の反応をやっぱり一番重視してますね。

    なかには、「それって本当にできてますか?」「現実にできるんですかそれ?」って言う人もいますね。
    なので、たぶん介護業界に失望って言ったらアレですけど、しちゃっている方も多いんだと思いますね。

    でも理想がないと仕事なんてできないし、というか理想があるから続けられると思うんですけどね。