他のデイに通っていた利用者さん。
とある理由でさんえすを利用することになりました。
利用開始の当日、朝迎えに行くと玄関で待っていました。
玄関で待っていた利用者さんに挨拶をすると、利用者さんは玄関先に置いてあるカバンを無言で指差しました。
そしてそのままカバンを置いて送迎車に向かって歩いて行きました。
その時に感じた違和感。
「自分のカバンを持つ」という意識が全くない。
恐らく今までのデイでは当たり前のようにスタッフが持ってくれていたのでしょう。
「利用者さんにカバンを持たせるなんて」と思う人も多いかもしれないですが、さんえすでは基本自分のカバンは自分で持ってもらいます。
「自分のカバンを自分で持つ」
すごく当たり前のことですが、介護の現場ではそれすらも「当たり前ではない」のです。
デイサービスは自宅で生きるために必要な機能訓練をする場所です。
カバンを持って歩くという基本的な動作もいわば機能訓練。
スタッフがその機能訓練の機会を理由もなく奪ってしまうことはあってはいけないことです。
「デイサービスの利用者だから」「介護施設だから」「高齢者だから」という漠然としたイメージや思い込みで、こういった過剰なサービス、過剰介護が行われている現場はまだ多くあると思います。
利用者さんが自分でできることを維持すること、増やすこと。
そして今の生活を続けていくこと。
それこそが在宅介護の要であるデイサービスが行うべき本来の「介護」です。
自分のカバンを「誰かが持っていってくれる」と置いて歩いて行ってしまう利用者さんを見て、違和感を感じるかどうか。
違和感を感じる人は「自立支援」の意味を理解できている人でしょう。
逆に何の違和感も感じることなくカバンを持ってあげる人は、一般的には「優しい人」ですが介護の現場では利用者さんの貴重な機能訓練の機会を奪い利用者さんの力を奪っている「優しくない人」です。
そんな利用者さんも約2ヶ月経った今では自分のカバンは自分で持ってさんえすに来てくれます。
野村